審判

作者:深谷忠記|徳間文庫
1986年、関東の地方都市で女児誘拐殺人事件が発生し、柏木という23歳の男性が逮捕される。
警察の取り調べでは、いったん自供した柏木だったが、裁判では一転否認に転じる。
だが、裁判では懲役15年が求刑され、柏木は刑務所に収監された。
2004年、この事件を担当した村上元刑事は定年退職し、悠々自適の生活を送っていた。
そんな彼の元に、刑務所から出所した柏木が現れ、自宅を監視するような行動を取り始める。
一方で柏木はホームページを立ち上げ、自身の冤罪を訴え、殺害された女児の母親にメッセージを投げかけていた。
殺された女児の母親の聖子は、夫とは離婚し、清掃婦として働いていたが、アル中になっていた。
村上は自分の調査に自信を持っていたが、柏木から警察内で証拠をねつ造した人物がいると聞かされる。
最初は取り合わなかった村上だが、かつての上司や事件の直前に警察を止めた堤に会い、疑問を感じるようになる。
その後、堤は村上と会う約束をしていた日に殺害され、村上は警察から疑われる。
村上は堤を殺害したのは柏木ではないかと思い、柏木の設定した会談場所を訪れる。
そこには、柏木と聖子がいた。


冤罪発生のメカニズム、犯罪者を出した家族の苦しみ、被害者の家族の崩壊と読みごたえがあった。
結末に明かされる犯人も意外で面白かったが、重苦しい雰囲気に満ちている。
一気読み出来るが、救いのない結末は暗い。この手のストーリーは少ないので一読の価値はある。


審判 (徳間文庫)

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