苦い雨

作者:樋口有介|中公文庫
零細業界誌の編集長の高梨は、かつて在籍した会社の総務部長がら呼び出される。
自分が会社を追われるきっかけとなった、ホステスを探してほしいとのこと。
手付金は多く、すぐに見つかるだろうと引き受けた。
だが、かつての会社は創業者派と銀行から派遣された役員たちの闘争が続いていた。
高梨は業界誌の仲間のつてを借り、ホステスの行方を徐々に追い詰めていく。
すると、高梨の家族に不審な事故が起き始める。
依頼主の創業者派も銀行側も高梨の存在が邪魔なようだ。
手を引いても何の損もしない高梨だが、ホステスの捜査を続行する。


90年代に書かれたハードボイルド作品で、少し時代を感じるが、内容は悪くない。
ホステスの女性の過去を探るのが最大のテーマで謎ときなのだが、この部分は面白い。
ただ、やはりその時代に起きている問題を描いているので、古さは否めない。
インターネットもなく、携帯電話もないことがもどかしく思える。
これが昭和の昔の話なら、すんなり読めたのだろうけど。
90年代は今の感覚では古くなっていることに居心地の悪さを感じた。

苦い雨 (中公文庫)

苦い雨 (中公文庫)