夏のくじら

作者:大崎梢|文春文庫
東京に住む篤史は、夏休みになると、祖父母のいる高知で過ごした。
中3のとき、初めてよこさい祭りに踊り手として参加する。
その時に言葉を交わした女性のことが忘れられず、高知大学に進学する。
祖父母の家に下宿しながら、大学に通う日々。
従兄の多郎から、再びよさこい祭りに誘われる。
最初は乗り気ではなかったが、元ヤンキーの月島や、面倒見のいい三雲とともに町内のチームに加わる。
そこで、カジという天才的なダンサーに出会うが、カジは篤史とそりが合わない。
初恋の女性を探し、祭りを盛り上げてと篤史は空回りするが、徐々にメンバーと打ち解けて行く。
カジの生い立ちを知り、結束の強まったチームはいよいよ本番を迎える。


あまり期待せずに読んだが、これは面白い小説だった。
よさこい祭りが始まるまでの篤史の冷めた視点と、仲間たちの苦悩。
祭りの準備の大変さと、仲間として絆ができていく過程がいい。
祭りが始まり、踊ることの高揚感の描写は非常に盛り上がる。
結末は少し尻すぼみだが、これは映画化するべき作品だろう。
少なくとも「プリンセス・トヨトミ」よりこっちの方が面白くなるだろう。


高知は大阪にいるころ何度も訪れていて、親近感がある。
狭い街だけど、波長が合う人も多く、楽しい。
もう、10年以上ご無沙汰だが、また機会を見つけて訪れたいな。


夏のくじら (文春文庫)

夏のくじら (文春文庫)