水底の森(上・下)

作者:柴田よしき|文春文庫
東京下町のアパートで顔面を破壊された男の死体が発見された。
この部屋に住む夫婦の行方がわからくなっていて、現場にはシャンソンのテープが流れていた。
警察が捜査に乗り出した直後、夫の死体が近くの公園で発見される。
妻の風子を重要参考人として、行方を追う。
所轄の刑事の遠野はサラリーマンから転職した変わり種だが、刑事としてのカンは優れていた。
風子に疑いを抱きつつ、背後に大きな謎があるのではないかと、風子の生い立ちを調べる。
すると、あまりにも不幸な彼女の生い立ちが浮かび上がってくる。
両親の離婚、養父の虐待、水商売に流れ、客との心中未遂。
彼女の足取りを追うにつれ、遠野はかつて客として相対した風俗嬢を思い起こす。



殺人事件の謎ときと、風子という不幸な女性の大河小説がミックスされ、読み応え十分。
また、遠野の中盤からの唐突な壊れっぷりはさらにスリルを加味して、面白かった。
現時点で作者の代表作となるであろう傑作。
風子と関わる人たちの人間ドラマが面白く、長編だがノンストップで読みたくなる。


水底の森 上 (文春文庫)

水底の森 上 (文春文庫)