あの頃の誰か

作者:東野圭吾光文社文庫
多作の人気作家の短編集で、かなり昔の作品が収録されている。
シャレードがいっぱい」はバブルの頃に、女性翻訳家が殺人事件に遭遇する話。
高飛車な女性の発言と態度が時代を感じさせるが、そんなに面白くない。
「レイコと玲子」もバブルの頃の作品で、多重人格の少女が起こした殺人事件テーマにしている。
「再生魔術の女」は養子を見つけてくれる女性と、依頼をした男性との会話劇。
スリルがあり、最後の2行にどんでん返しがあり、これだけが非常によくできた小説だった。
「さよならお父さん」はヒット作「秘密」のベースとなった作品。
「名探偵退場」「女も虎も」は何だかわけのわからない寓話のような内容。
「眠りたい死にたくない」は死に直面する男のショートストーリーだが、面白くない。
「二十年目の約束」はかたくなに子供を作ろうとしない夫の過去を暴く妻の話。
謎めいた理由があまりにも陳腐で、駄作。
多作な作家なら駄作もあるだろう。そんなダメな寄せ集め的な作品。
「再生魔術の女」だけが面白い。

あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12)

あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12)