冬の喝采(上・下)

作者:黒木亮|講談社文庫
経済小説を書いている作者が、早稲田大学の駅伝選手だったことを綴った作品。
1957年に北海道で生まれた作者は、運動が苦手だった。
だが、中学時代に初めて走った1500メートルで、自らの能力に気付き、走る楽しさを知る。
地区内の大人たちのサークルに入り、トレーニングに励み、道内で記録を出し始める。
タイムが伸びて行くが、高校時代に足を痛めてしまい、走れなくなってしまう。
その後、早稲田大学に進学して、足の治療をし、2年生になってから競走部に入部する。
同級生にのちのオリンピックのマラソン選手になった瀬古利彦がいた。
瀬古の活躍で、早稲田の競走部は復活するかに思われたが、一人の選手だけでは箱根では勝てない。
作者は怪我を完治させ、3年生になって、3区を走り、4年生で8区を走る。
この作品のコアになっているのは、彼らの監督の中村で、特異な人物だ。
戦中派で、一時期陸上界で干された人物だが、早稲田復活のため起用された。
感情の起伏が激しく、部員たちと衝突する。作者も中村に目をつけられ、いじめられる。
レースの劇的な要素は少ないが、昭和の世相を知ることが出来て、面白かった。
ただ、練習のメニューは何キロ×何本とか、延々と書かれていて、そこは退屈で読み飛ばした。
最後に作者と肉親との赤裸々な記述もあるが、感動の要素はない。

冬の喝采(上) (講談社文庫)

冬の喝采(上) (講談社文庫)