夜よ、泣かないで

作者：香納諒一｜ハルキ文庫
麻生純は聾唖者で、新宿でやくざの未亡人の絹代の介護ヘルパーをしている。
いつも行く喫茶店で、不審な男を1週間続けて目撃した。
その男は、大物政治家を狙撃するが、返り討ちにあい、死亡する。
暗殺者の男は、純に「世界を救ってくれ」というメッセージを残す。
純にはその瞬間から、相手に触れると未来が予測できるようになった。
平穏な生活を望む純だが、暗殺者の男の知り合いを名乗る女性から電話がかかってくる。
待ち合わせ場所にで、襲撃に会うが、女子プロレスラーと小人プロレスのコンビに救われる。
陸軍中野学校で行われた予知能力の開発、最貧国の幼児を誘拐した挙句の臓器売買。
複雑な要素が絡みつつ、純はトラブルに巻き込まれていく。

聾唖者の女性を主人公にした珍しいシチュエーションだが、面白かった。
この作家は好い話を提供している。
今回の作品でも、純を支えるやくざの未亡人の絹代、女子プロレスラーの夏子。
小人プロレスの春男児とキャラクターの造詣が好い。
戦前の超能力開発期間の謎と、老人医療の闇も上手く設定できていた。
もう少し売れてもいい作家だと思うのだが。

夜よ泣かないで (ハルキ文庫)