悪果

作者:黒川博行|角川文庫
大阪府警今里署のマル暴担当の刑事の堀内は、相棒の伊達と共に暴力団を取り締まっている。
だが、堀内と伊達は昼間から酒を飲み、夜になるとミナミで飲み歩く生活。
刑事であることを盾に、どんな店でも5千円以上支払うことは無い。
さらに堀内は賭場で摘発された実業家や医師を恐喝し、裏稼業で副収入を得ている。
その金で高級クラブのホステスを愛人にしており、真っ当な警官ではない。
そんな堀内でも、自分が見つけてきたネタはしっかりあげようとする。
かねてから捜査を続けていた暴力団の賭場を摘発し、一網打尽に検挙する。
賭場の客の中に大手学校法人の理事長がおり、早速、恐喝のターゲットに定める。
提携しているブラックジャーナリストの坂辺を使い、揺さぶりをかけるが、直後に坂辺はひき逃げ事故で死亡。
堀内にも怪しい人物が尾行に着くようになる。
襲撃され、警察手帳を奪われた堀内は、伊達に協力を求めるが。


とことん腐った悪徳刑事の活躍を描いたピカレスク小説。
堀内や相棒の伊達だけでなく、同僚のマル暴の刑事たちも全て腐敗に手をそめている。
堕落しつつも、目の前の捜査だけはきちんと行うところは面白い。
前半の賭場に突入するまでの酒を飲みだらけつつも、ポイントを押さえる捜査のシーン。
後半の堀内が危機に陥り、組織の力を借りずに単独で乗り切ろうとするサスペンス。
これらが上手く融合し、タイトル通りの小説になっており、読み応えがある。
この作家の作品はほとんどが大阪を舞台だが、他の地域の人はどう思っているのだろう?
自分は大阪出身なので、今里署は架空だが、それ以外の部分はかなりリアルだと思っている。

悪果 (角川文庫)

悪果 (角川文庫)