天地明察

作者:沖方丁角川書店
江戸時代初期に平安時代から続いていた宣明歴という暦から新たな暦を作った天文学者の話。
碁打ち衆の安井算哲こと渋川春海は、囲碁より算術の問題を解く方が好きだった。
絵馬に書かれた算術の問題と解答を見ていると、関孝和という算術の天才に出会う。
春海は関に自作の問題を解いてもらおうとするが、解答のない問題を出題してしまう。
激しく落ち込む春海に、時の大老酒井忠清から北極星の位置を探る測地を命じられる。
算術を用い、緯度を測る作業が春海には楽しく、このころから新しい暦を作ろうと考える。
囲碁や算術以外に神道朱子学、測地、暦術に明るかった春海は時の権力者に可愛がられていた。
大老の酒井や徳川光圀保科正之の後押しを受け、新しい暦の作成に取り掛かった春海。
当時の暦が2日間ずれていることを計算し、新たな暦を発表するが、日蝕の予報に失敗してしまう。
高齢化した協力者の死亡や妻の病死にもめげず、20年後についに大和暦として披露される。
暦を測地と算術を使って作り上げていく過程がテーマなのだが、これが非常に面白い。
春海の人間らしい描写が現代人にも通じるものがあり、大いに共感できる。
関孝和との友情も春海の一方通行だったが、最後は関からの協力も取り付ける。
何かをするのに遅すぎることはない、あきらめなければ夢はかなうと気付かせてくれる作品。
武力で武士の威厳を保った時代から、政治で民を治める時代への過渡期の話で、当時の権力者の考えもよくわかる。
本屋大賞第1位ということも納得できる。

天地明察

天地明察