契約

作者:明野照葉光文社文庫
牧岡南欧子は34歳で、転職を何回かして、不倫関係の恋人がいた。
貯金もなく、さえない人生で、下り坂を感じていた。
子供のころから聡明で、容姿も良く、クラス内では常に中心にいた。
中学受験では、誰もがうらやむ学校に合格した。
そのままエスカレータ式に高校に進むが、大学受験で躓いてしまう。
そこから人生が狂ったと南欧子は考えていた。
そんな南欧子のもとに、ヘッドハンティングのオファーが来る。
多額の報酬と、自身を磨くための投資が保障されていた。
南欧子は戸惑いながらも、ヘッドハンティングに応じることにした。
エステやカルチャー、マナーなどのプログラムをこなし、以前の美貌を取り戻していく。
自信を取り戻した南欧子は、新しい職場で働きはじめるが、様子がおかしいことに気づく。
知的タレントのマネジメントが仕事だったはずが、老人介護などを押しつけられる。
そのうちに、まともな仕事を与えると言われるが、雇用主が誰だかわからない。
その雇用主は、南欧子が小学校時代に知らずにいじめていた同級生だった。
同級生による復讐を知った南欧子は、この職場を退職しようとするが、契約書を見せられ、絶望する。
高額な賃金にばかり目が行き、細かな罰則まで読んでいなかった。
辞めるためには高額な違約金を払わなければならない。
南欧子の絶望と、雇用主の恨みのまじりあった小説で、面白かった。

契約 (光文社文庫)

契約 (光文社文庫)