60秒の煉獄

作者:大石圭光文社文庫
人生で一度だけ1分間時間を止めることができたら、人はどんな行動をとるだろうか。
日常に不満を抱えた人たちの前に、天使が現れ、その能力を授けていく、連作集。
冒頭の話は、リストラにおびえる中年サラリーマンの話。
最後に正義感に目覚めるのだが、この作者にしては、真っ当すぎる。
だが、次の話からは、能力を手にしたことで、どす黒い欲望に目覚める話が続く。
人には言えない、あるいは理解してもらえない性癖を描くことを得意にしている作者の得意パターンだ。
ねじ曲がった人が勝手に時間を止めて、不可解な事件を引き起こしていき、結末は警察が未解決事件を追う展開になる。
でも、これで収拾をつけるのは難しくなった。
この作家の描く世界観は嫌いではないが、これは連作にしたことで失敗になったと思う。

60秒の煉獄 (光文社文庫)

60秒の煉獄 (光文社文庫)