空白の叫び(上・中・下)

作者:貫井徳郎|文春文庫
殺人を犯した3人の中学生が、少年院の出所後に、再び犯罪に手を染める話。
小学生のころイジメを受けていた久藤は、中学生になり立場が逆転する。
かつていじめていた同級生に復讐し、誰にも手を出せない存在として君臨していた。
そんな久藤のクラスに柏木という新人女性教師が赴任する。
久藤を問題児と認識した柏木は指導をするが、逆に久藤に犯されてしまう。
だが、柏木は久藤をとり込んでしまい、恐怖を感じた久藤は柏木の首を絞めて殺害。


開業医の父を持つ葛城は、頭脳明晰で容姿にも恵まれていたが、虚無感を感じていた。
年上の女性とSEXをする機会に役が立たず、初めて挫折感を味わう。
葛城は平静を装い、ガンダムのプラモデル作成に没頭する。
そこに少し頭の弱い使用人の息子がやってきてプラモデルを壊してしまう。
激情に駆られた葛城はゴルフクラブで滅多打ちにして、使用人の息子を殺害。


父親が誰かわからず、母親は男を次々と変え、叔母と祖母と暮らす神原。
彼の記述だけが唯一一人称で語られる。不幸にめげない健気な性格に思える。
だが、祖母の死から母と叔母の財産相続争いが始まり、嫌気のさした神原は母を焼き殺す。


久藤、葛城、神原は少年院に送られる。


そこで3人は過酷ないじめに直面する。この少年院の記述は強烈で読みごたえがあった。
出所した3人はそれぞれの道を歩み始めるが、更生を阻む妨害にあう。
3人は再び集まり、銀行強盗を企てる。葛城の天才的な発案で、2億円強奪に成功する。
ただ、それは新たな破滅への序章に過ぎなかった。
この作家はハズレが少ないが、これは文句なしに面白い作品だった。
デビュー作の慟哭ほどの衝撃はないが、話の重厚さではこちらが上回る。
結末をもう少し丁寧に描けば傑作になったであろう。


空白の叫び 上 (文春文庫)

空白の叫び 上 (文春文庫)