愛と幻想のファシズム

作者:村上龍講談社文庫
80年代中期、自称ハンターの鈴原冬二はカナダでゼロという男と出会う。
世界情勢は冷戦が緩み始め、アメリカの経済界とソ連が手を結んでいた。
南米やヨーロッパの中産国は政情が不安定で、日本は自民党政権が崩壊しつつあった。
日本に戻った冬二とゼロは「狩猟社」という政治結社を作る。
日本は失業者があふれ、都心でも暴動が起きていた。
晴海の暴動を鎮めた冬二のカリスマ性の下に、官僚やテロリストや学者が集結する。
私兵組織「クロマニヨン」を使い、政敵を暗殺し、クーデターを起こす。
近未来を予測した小説なのだが、何も当たっていないから、興ざめの部分がある。
でも、薬を使ってライバルを廃人にするリアルな描写は面白かった。
文庫本で上下巻合わせると1000ページを超える長い作品だが、飽きることはなかった。
ただ、冬二のカリスマ性の設定がどうしても無理があった。
学歴も職歴もない猟師が独裁者を目指すのはおかしい。

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)