受命

作者:箒木蓬生|角川文庫
日系ブラジル人医師の津村は、北京の学会で知り合った北朝鮮の医師に請われ、平壌に赴く。
北園舞子は、在日朝鮮人の職場の会長の付き添いで、万景峰号に乗り、北朝鮮に向かう。
一方、舞子の友人で、韓国人の李寛順は、密命を帯び、北朝鮮に侵入する。
3人が目にする北朝鮮の不条理で悲惨な世界が、いくつものエピソードで描かれ面白かった。
700ページ近い作品で、現地の人たちの苦悩と、3人が体験する監視社会に終始する。
結末は一転し、サスペンスアクションになるが、これは少し荒唐無稽すぎた。
ヒューマニズムに富む作者なのだが、金正日のことはよほど嫌いなのだと感じた。
指導者の末路を考えると、これは非常に問題作と言える。
こうなればいいと思うが、この作家が描く作品ではない。

受命 (角川文庫)

受命 (角川文庫)