終末のフール

作者:伊坂幸太郎集英社文庫
8年後に小惑星が地球に衝突し、人類が滅亡すると発表された。
人類は絶望のため混乱し、暴動や殺し合いが発生した。
だが、その混乱も小康状態を取り戻し、惑星衝突まであと3年となった仙台が舞台。
終末までの時間は短いが、日常は永遠に続くような錯覚を感じさせる。
でも家族を殺されたり、自殺で失ったりで大きな喪失を抱えた人たちが登場する。
この作家は物語を紡ぐのが非常に上手い。セリフ回しも巧みだ。
それが、カラ回りになっている作品が最近は多かったが、これは良かった。
人類の滅亡の期限が迫った中で、悲惨な描写もありながら、淡々と語られる言葉がいい。
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
希望を見出せない日常の中で、絶望と闘う人たちの姿は美しい。

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)