甘い鞭

作者:大石圭|角川文庫
不妊治療の医師で32歳の奈緒子は、その美貌とともに患者から信頼を得ていた。
彼女には、17年前に隣家の男から1か月間も監禁され、凌辱された過去があった。
そのトラウマから、女医とSMクラブ嬢のセリカというもう一つの顔を持っていた。
医師としての昼の生活、娼婦としての夜の生活、それから監禁時の奈緒子と犯人のやりとり。
3つの場面で構成された小説だが、エロで終始しないところがこの作家の上品さなのだろう。
世間一般で成功者として認められ、人並み以上の報酬を得ているのに、特殊な性癖に悩まされる。
この作家の小説にありがちなパターンだが、今回は女性が主人公というのは珍しい。
でも、これはそんなに面白くなかった。せっかく女性を主人公に据えたのに、真新しさがない。
淡々とした日常を飽きさせずに読ませるのは相変わらずだが、結末はもっと劇的であってほしかった。
主人公のパターンが画一化されてきていることにも危惧を覚える。

甘い鞭 (角川ホラー文庫)

甘い鞭 (角川ホラー文庫)