厭な小説

作者:京極夏彦祥伝社
厭な雰囲気を伝える7つの連作集。ホラーのようでホラーではない。
家に現れる異形の子供や、変質的なぼけ老人。不幸な境遇を逆転させる扉。
仏壇に詰まった先祖の欲望の形。コミュニケーションのとれない彼女。
かつての痛みを何度も再構築させる自宅。そして、狂言回しが手に取る古本。
幻想的な雰囲気に満ちているが、正直なところ、面白くなかった。
オビに「知りませんからね 読んで後悔しても。」とある。
作品を読んだ感想としては、その通りだった。
相変わらず分厚く、読みにくい漢字が多いが、慣れていれば問題ない。
むしろ、この作家の作品は雰囲気をつかみやすく、読みやすい。
何だか物足りないと思うのは、作者お得意の無駄な蘊蓄がないからだ。
京極堂シリーズも実は過剰なまでの蘊蓄の披露を除けば、ミステリとしての骨子は弱い。
京極堂シリーズはキャラも含めて、独自のジャンルを築いていると思う。
もう3年ほど新作は出ていない。そろそろ新作が読みたい。

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