天正十年夏ノ記

作者:岳宏一郎|光文社文庫
信長の華々しい登場から本能寺の変までを見届けた公家の物語。
天皇の秘書官である勘修寺晴豊が主人公で、彼の視点から戦国時代が描かれる。
この時代の朝廷はほとんど歴史の表舞台に現れないが、実は彼らの残した日記が重要な資料になっている。
足利義昭の追放、比叡山の焼き打ち、浅井・朝倉家の滅亡、長島一向集の皆殺し。
松永久秀荒木村重の裏切りに、石山本願寺との戦いなど、この時代の主要な出来事は言及されている。
また、貧乏貴族の勘修寺晴豊の困窮ぶりと、人間臭さが対照的に魅力があった。
代表作の「群雲、関ヶ原へ」に比べると面白さは及ばないが、着眼点がいい。

天正十年夏ノ記 (光文社時代小説文庫)

天正十年夏ノ記 (光文社時代小説文庫)