死霊列車

作者:北上秋彦|角川ホラー文庫

  • 文庫本裏書き

東京と出雲市で発生したダーズ(致死的急性狂犬病症候群)が感染爆発、死者1800万人と推定され、政府の主要機関は札幌に移された。
ダーズは人を咬むことによって鼠算式に患者を増殖させ、発病後の死亡率は限りなく100%に近い。
国民はこのまま滅びてしまうのか。
空路が絶たれ、青函トンネル閉鎖の時刻も刻々と迫る中、家族を失った15歳の鉄道少年、翔太はトロッコ列車「おろち号」を運転し、北を目指す。
イムリミットホラー。

  • 感想

ダーズに発症した患者は、すぐに人間を見境なく襲うようになり、まるでゾンビのようだった。
将太は発症した母から逃れ、女子大生の沙織を救い、自力で「おろち号」を運転し、北を目指す。
トリマーの美都子は、帯状疱疹で自宅で伏せっており、ダーズの発生を知らなかった。
マンションを出たとたんにゾンビのような患者に襲われ、訳もわからず車で逃げ出す。
一方、陸上自衛隊の特殊部隊の隊長、藤堂は島根大学ウイルス研究所の研究者の救出を命じられる。
ヘリで松江に向い、研究者を確保することに成功したが、ゾンビ達にヘリを破壊されてしまう。
美都子と藤堂隊は、将太と沙織の運転する「おろち号」に乗り込み、協力して北に向かう。
あまり期待しないで読んだのだが、これは意外に面白かった。
将太と車掌役の国木田、沙織、美都子のおろち号を目的地に向かわせるための洞察。
絶えず、おろち号を襲撃してくるゾンビの集団と自衛隊特殊部隊の兵士たちの戦い。
一人またひとり、ゾンビの犠牲になり、新潟に到着したときには、青函トンネル閉鎖の8時間前。
そんな彼らを襲う新たな敵のヘリコプター。
B級作品ながら、自分のツボにはまり、クライマックスまでスリル満点だった。
もう少し人物描写をきめ細かくすれば、ホラーの傑作になったと思う。

死霊列車 (角川ホラー文庫)

死霊列車 (角川ホラー文庫)