草祭

作者:恒川光太郎|新潮社
独自の幻想的な世界を紡ぎ出す作家の第4作目。
相変わらず綺麗な表現と不思議な世界が展開する。大人も子供も読んで損はしない。
今作は、美奥という時々不可思議な現象が起きる町で語られる5つの話が収録されている。
「けものはら」は中学生の主人公が昔遭遇した不思議な野原で、失踪した友人に出会う話。
「屋根猩猩」は美奥の家並の屋根に現れる獅子舞の役割を請け負った少年と少女の話。
「くさゆめがたり」は過去の美奥に紛れ込んだ山の少年による復讐譚。
「天化の宿」は傲慢な父から逃げ出し、<天化>という不思議な盤面ゲームをする少女の話。
「朝の朧町」は犯罪に巻き込まれた女性が、長船さんという男性が作った町で同居する話。
デビュー作の「夜市」から魅力的な作品を発表しており、この作品にも引き込まれた。
特に「くさゆめがたり」は2作目の「雷の季節の終わりに」を彷彿させるストーリー展開で、面白かった。
こんな幻想的な世界を造形できる作家は珍しく、貴重だと思う。
ただ、独特な造語が減っているのは、少しパワーが落ちてきているのではと心配。

草祭

草祭