虹色にランドスケープ

作者:熊谷達也|文春文庫
バイク乗りの男女7人を描いた連作集。
「旅の半ばで」は百貨店の閉店に伴い、リストラにあった男の話。
ローンの残った自宅と家族を守るため、ツーリング先の北海道で自殺を図る。
「冴えない肖像」はプロのライダーを目指す青年と癌に倒れた父の話。
この時点では短編集だと思ったが、3つめの「オーバークール」から話が繋がり出す。
不妊治療の結果で離婚をした男、その男性を思う女子大生。
バイク事故で足が不自由になり、ボクシングに打ち込む女性。
かつての恋人に会うため仙台に向かう、カメラマン。
そのカメラマンが会おうとしているのは、最初の話に出てくる男性の妻。
7つの話が収録されており、ハッピーエンドの話はなく、ほろ苦い後味。
でも、絶望的な最初の話から、段々と希望を持たせる話に変わってくるのは上手い。
マタギとか歴史作品に魅力的な作品を書いてきた作者だが、こういう作品も書けるのは驚きだ。
「モヴィ・ドール」に続き、面白い作品だった。
盗作などしなければよかったのに。

虹色にランドスケープ (文春文庫)

虹色にランドスケープ (文春文庫)