私という運命について

作者:白石一文|角川文庫

  • あらすじ

大手電機メーカーに勤務する冬木亜紀は28歳で、恋人からプロポーズされる。
だが、結婚する相手ではないと思い、断ってしまう。
その後、恋人の康は、後輩の女性と結婚し、アメリカ転勤となる。
康の母親から「あなたは息子と結婚する運命だった」という手紙を受け取る。
33歳になった亜紀は福岡に転勤となり、年下のデザイナーの純平と出会う。
結婚するつもりでいたが、純平の起こした些細な交通事故で破局を迎える。
その翌年、東京に戻ってくるが、弟の妻の沙織が病死する。
荒廃する弟を見つめるしかなかったが、周りの人間の援助で弟は立ち直っていく。
一方、アメリカで康は肺がんに侵され、離婚し、日本に戻ってくる。
職場に復帰した康と、香港で再開したとき、亜紀は37歳になっていた。
病というハンデを背負った康に亜紀はためらうことなく結婚を申し込む。
夫のがんの再発と闘いながら生活を送る亜紀はやがて子供を身ごもる。

  • 感想

一人の女性の20代後半から40歳を迎えるまでの大河小説で、非常に読みごたえがあった。
康との結婚をあきらめた時点での手紙は感銘深いが、まだまだ序の口。
その後、福岡での婚約破棄をはじめ、義妹の死や、不幸が立て続けに襲ってくる。
物語は93年の細川内閣成立から始まるが、時代のトピックスもあり、楽しめる。
ただ、登場人物が社会的に恵まれている立場にいるので、それほどの不幸は感じなかった。
それでも女性が主人公の小説としては、エンターテインメント性あふれる作品だった。
文句なしに面白い。