ありふれた魔法

作者:盛田隆二光文社文庫

  • あらすじ

城南銀行の五反田支店で次長を務める44歳の智之は、部下の茜から相談事を受ける。
茜の担当する顧客からクレームを受け、箱根まで同行してほしいと頼まれた。
箱根まで謝罪に訪れ、東京に帰る車中で、智之は茜に恋心を抱く。
その後、二人は定期的に食事に行くが、智之は家族を思うと一線を越えることができない。
もどかしいプラトニックの関係が続くが、ついに二人は肉体的に結ばれる。
だが、その直後から、家庭で、職場で智之は様々なトラブルに巻き込まれていく。
中年男が経験する出会いと別れ、喪失と再生の物語。

  • 感想

中年男が部下の女性と不倫をする話だが、実にさっぱりしている。
このまま甘ったるいプラトニックで話が終わってしまうのかと逆にはらはらした。
だが、茜と関係をもった直後から、立て続けに降りかかる問題で話は面白くなった。
また二人の不倫だけでなく、五反田の中小企業の現状を描いている点は読ませる。
娘の彼氏を探るためにMixiに加入したり、現代の通俗的な部分もあり、リアルだった。
家族や人の秘密をのぞき見ているような背徳感があり、スリルもあった。
智之や茜の行動はきれいすぎて共感できない部分が多いが、面白い作品だった。
他の作品もぜひ読みたいと思う。

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