禍記(マガツフミ)

作者:田中啓文角川ホラー文庫

  • あらすじ

幻の古史古伝「禍記」の存在を聞かされた編集者の恭子は興味を示す。
だが、そのことを教えてくれた老作家は失踪し、周りは恭子を敬遠するようになる。
恭子の存在は幕間に語られ、本編では5つの話が展開する。
「取りかえっ子」は生まれた子供が、誰かにすり替えられたと妄想に陥る母の話。
「天使蝶」は巨大な蝶の羽を持ち、空を飛ぶ赤ん坊を探しに行く助教授の話。
「怖い目」は失明した婚約者を追い、盲人の島「めんやみ島」に渡った女性が出会う恐怖。
「妄執の獣」は子供だけが見ることのできる「モミ」が、大人を殺戮していく話。
「黄泉津鳥舟」はワープで宇宙旅行ができるようになった未来の話で、トンデモ理論が展開する。

  • 感想

この作家はSF作家からスタートし、ホラー小説、最近は落語をモチーフにした作品も発表している。
ホラー小説は多くないが、自分が読んだ作品はいずれも面白かった。
で、本作は短編集だが、少し作品にばらつきがあったように思う。
「天使蝶」「怖い目」はグロテスクな異境を描き、ホラー短編としても出来は良かった。
ただ、その他の作品は普通の内容で、「黄泉津鳥舟」は設定についていけなかった。
だから彼のSF作品には食指が動かないのだろうな。
ホラーでも、ところどころギャグのような表現が出てくるところは気に入っている。

禍記 (角川ホラー文庫)

禍記 (角川ホラー文庫)