リオ 警視庁強行犯係・樋口顕

作者:今野敏新潮文庫

  • あらすじ

東京の荻窪のマンションで、デートクラブのオーナーが殺害される。
現場から、一人の美少女が逃げ去るのを目撃されていた。
捜査本部はその少女を重要参考人として、行方を追う。
逃げ出した少女は「リオ」と呼ばれる女子高生であることが判明する。
だが、樋口警部補は殺害現場に違和感を覚える。
その後、第2、第3の殺人事件が発生し、現場から「リオ」が逃走するのが目撃された。
ようやく、「リオ」の身柄を確保するが、彼女は頑なに犯行を否認する。
状況証拠は「リオ」の犯行を指し示すが、樋口は別の犯人の可能性を指摘する。
捜査本部の方針に逆らい、樋口は新たな相棒の氏家と捜査を始める。

  • 感想

オーソドックスな警察小説だが、強烈な世代論のメッセージが込められている。
樋口が作者と同じ昭和30年という生まれで、団塊の世代に対して嫌悪感を持っている。
「彼らは闘争という手段で自由を獲得しようとしたが、結局は体制に組み込まれた」
「家庭や子供のことより、自分の要求の方が大切なんだ。なんせ、全共闘世代だからな」
「私たちは、常に全共闘世代の残飯を食わされてきたんです」
自分は団塊の世代の人たちと接点はないが、作者の世代はよほど嫌な眼にあったのがわかる。
本編よりも、樋口の口を借りて語られる世代論の方が面白いくらいだった。
熱くなる世代論とともに、捜査活動が進むが、途中で犯人が分かってしまったのは残念。
でもこの作品は飽きさせず、読みごたえがあった。途中で犯人が分かっても面白い。
この作者の作品は以前に数冊読んだことがあるが、ここまで実力があるとは思わなかった。
シリーズ化されているので、次の作品も読みたくなった。

リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)

リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)