鳥辺野にて

作者:加門七海光文社文庫
江戸時代や明治の黎明期の怪異を描いた短編集。
「左」は動かなくなった自分の体の部位を、彫刻物で取り替えていく職人の話。
「鳥辺野にて」は病気のため、荒れ野にうち捨てられた盗賊の話。
「赤い木馬」は吉原の火事現場を見に行った青年が、浅草で不思議な少女に出会う。
「左右衛門の夜」はかつて殺害した女性の家に彷徨いこむ武士の話。
「墨円」は古道具屋で買った屏風に描かれている極楽鳥が、先妻の顔に変化する話。
「菊屋橋」は橋ですれ違う3組目の人を占いに見立てる町娘たちの話。
「あずさ弓」は長屋の隣に訪ねてくる巫女をからかい、謂れのない霊に追われる話。
「朱の盃」は川べりの柳の下に立つ老人が持つ不思議な杯に魅せられる話。
いずれの話も因果関係のある怪談というよりは、単純に怪異を淡々と描いている。
こういう話を書く人は少ないので、貴重だ。ただ、それほど面白いと思わなかった。

鳥辺野にて (光文社文庫)

鳥辺野にて (光文社文庫)