純情期

作者:小川勝己徳間書店

  • あらすじ

中学2年生の日高優作は、性に目覚めてセックスのことばかりを考えていた。
友人たちは野球や、バンド、映画制作に取り組んでいるが、優作は帰宅部だった。
ある日、生活指導の齋藤瑠璃子先生の真っ白な太股を目撃し、トリコになってしまう。
先生との妄想にふける日々を送るが、先生が顧問を務める体操部に入部する。
ところが、そこに優作をいじめている同級生の不良の瀧口が後を追うように入部。
璃子先生との妄想シーンは深まるが、現実は惨めで、砂を噛むような毎日。
そんな夏休みに、優作の親友が強盗事件を起こす。動揺する学校と優作。
また、瀧口が瑠璃子先生によからぬ計画を立てていることも発覚する。

  • 感想

これまで破滅型のバイオレンスや犯罪小説を書いてきた作家が書いた青春小説。
璃子先生を犯そうとする瀧口の発想にその片鱗は見えるが、これは正統派の小説だ。
優作の妄想は全開で、少し恥ずかしくなるくらいだが、中2という年代をよくとらえている。
優作はどこにでもいる少し臆病な少年で、頭もあまりよくない。
そんな彼に過酷な運命を背負わせるのは、作者も遠慮したのだろうか?
妄想だけが、エスカレートするだけで、優作の生活は平凡だし、起伏に欠けたと思う。
それでも終盤に瑠璃子先生を救いに行くシーンや、ラストシーンにはかすかな成長が見られるのはいい。
この作家は目立たないけど、良い作品を書いている。
ほとんどの作品を読んでいるけど、ハズレはない。
特に「彼岸の奴隷」「撓田村事件」「眩暈を愛して夢を見よ」は良い。

純情期

純情期