さよならバースディ

作者:荻原浩集英社文庫
東京の西のはずれにある霊長類研究センターでは、ボノボに言語を教える実験を行っていた。
責任者の安達助教授は1年前に原因不明の自殺を遂げたが、現在は助手の真が実験を進めていた。
実験対象のボノボは3歳の子供のオスで、バースディと名づけられ、真たちに懐いていた。
ただ、指導教授の野坂が功名心から、バースディを見世物にしようとする動きに真は心配していた。
バースディは100語近い単語を覚え、実験は順調に進んでいた。
真は、共に実験に参加していた大学院生の由紀にプロポーズをするが、その夜、彼女は自殺する。
実験棟から飛び降り自殺をしたが、その場にはバースディが残されていた。
真はバースディから、由紀の自殺の状況を聞き出そうとするが、実験の打ち切りが決まる。
愛する人を失う悲しみと、学会の不条理を描いたミステリーで、話の組立ては上手い。
加えて、ボノボのバースディの人間の子供に近い愛らしさには共感を覚える。
クライマックスで真とバースディが会話を試みるシーンには感動した。少しベタだけど。
お気に入りの作家の中でも、ハズレの作品がほとんどない貴重な作家だ。

さよならバースディ (集英社文庫)

さよならバースディ (集英社文庫)