闇の音

作者:明野照葉|ハルキ・ホラー文庫
吉川真昼は音に非常に敏感で、一般社会になじめず、自宅で翻訳をし、生計を立てていた。
自宅のマンションは防音が行き届いているが、それでも上の階に住む男性が気になっていた。
生活音はまったく聞こえず、手を洗う音とうなされている声だけが聞こえてくる。
上階に神経を張り巡らせ、「階上の男は人を殺している」と妄想じみた確信をする。
だが、真昼の前に男は姿を現すことはなく、ますます不安に駆られていく。
そんな真昼だが、友人から省吾という男性を紹介され、一目で気に入ってしまう。
二人は吸い寄せられるように親しくなるが、あるとき省吾の鼓動に不安を感じる。
「上階の男の息遣いに似ている。まさか上階の住民は省吾なのではないか」と思い始める。
そんな真昼の自宅のポストに「五階の男は人を殺している」という文書が投げ込まれる。
意を決して、5階のチャイムを押す真昼。扉から出てきた男性の正体は...。
聴覚に敏感すぎるのは罪人の末裔の血が流れているという思い込みは面白い。
また、聴覚が敏感過ぎることで被る被害もよく描けていたと思う。
5階の住民を訪ねるところまでははよくできたホラーだった。
でもその後の展開は納得できない。この作家で初めてハズレをつかまされたと思う。

闇の音 (ハルキ・ホラー文庫)

闇の音 (ハルキ・ホラー文庫)