岩佐又兵衛 浮世絵を作った男の謎

著者:辻惟雄|文春新書
岩佐又兵衛は江戸時代初期に活躍した絵師で、最近知られるようになった。
荒木村重の遺児で、母親を織田信長に処刑されたという劇的な経歴を持つ。
京都で成長したが、その経歴は謎で、表舞台に出てくるのは、越前藩に移ってからになる。
藩のおかかえ画師ではなかったようだが、現在残っている絵の多くを描いている。
その後、江戸に制作活動の場を移し、その地で没したのが1650年。
菱川師宣より先に制作を始めたので、最近の研究では浮世絵の先駆者と目されている。
肖像画は「豊頬長頤」という頬が豊かで、顎が長いという特長がある。
また絵巻物に代表作が残っており、血なまぐさと躍動感あふれる絵柄には見入ってしまう。
「山中常盤物語絵巻」「堀江物語絵巻」「小栗判官」などは注釈も充実していて、見ごたえ十分だ。
殺戮のシーンが余りにも生々しく描かれており、江戸後期の芳年や芳幾、絵金を彷彿させる。
これは戦がなくなり、武による栄達が望めなくなった大名たちが残虐性を絵に求めた結果だという。
この本は新書だが、絵はすべてカラーでふんだんに掲載されている。
もう少し大きいサイズで見たいと思うが、値段を考えると満足。
自分の知らなかった絵を見るのは楽しい。

浮世絵をつくった男の謎 岩佐又兵衛 (文春新書)

浮世絵をつくった男の謎 岩佐又兵衛 (文春新書)