幕末動乱の男たち(上・下)

作者:海音寺潮五郎新潮文庫
これは今から40年ほど前に発表され、幕末に活躍した人たちを史伝形式で綴った作品。
既知のことが多くても、文体が古くても、歴史小説のパイオニアとして読み応えがある。
上下巻で12人の人物が描かれている。
寺田屋騒動で命を落とした有馬新七。生野義挙の中心人物であった平野国臣
新微組結成後に暗殺された清川八郎。井伊直弼の懐刀であった長野主膳
土佐勤皇党の指導者の武市半平太幕臣エリートで討幕後処刑された小栗上野介
松下村塾を興した吉田松陰の狂気にはかなりのページを費やしている。
大政奉還後、徳川慶喜の危機を救った山岡鉄舟。綿密な計画で維新の元勲になった大久保利通
最後は田中新兵衛岡田以蔵河上彦斎の3人の刺客を取り上げている。
開国が近づく日本で、皆それぞれの信念で行動を起こした足跡が鮮やかだ。
動乱の時代で自分は何をできるのか、何をすべきなのか。
作者は評をいれながらも、それぞれの人物について否定はしていない。
ここで取り上げられた人物は山岡鉄舟以外は全員、非業の死を遂げている。
自分には新鮮味がなかったが、これはもっと若いうちに読んでおくべきだったと後悔した。
幕末の人物に初めて触れるのなら非常に良い読み物だと思う。

幕末動乱の男たち(上) (新潮文庫)

幕末動乱の男たち(上) (新潮文庫)