千日紅の恋人

作者:箒木蓬生|新潮文庫
主人公の時子は40歳手前の独身で、父が遺した扇荘というアパートの管理人をしている。
時子は最初の夫を交通事故で亡くし、2度目の夫は極度のマザコンで離婚することになった。
老朽化が進む扇荘には、様々な問題を抱えた住民がおり、時子を悩ませる。
パチンコ狂いで、家賃を滞納する主婦や、精神を病んだ老婆に、喧嘩が耐えない夫婦。
時子は彼らの面倒を見ながら、トラブルのたびに近所の住民に頭を下げる日々を送っていた。
ある日、扇荘の空き室に有馬という青年が引っ越してきた。人懐っこいこの青年に時子は次第に惹かれていく。
今時珍しいくらい真面目で、一途な恋愛小説で、古風な『めぞん一刻』中年版という印象だった。
住民達のトラブルは面白いく、恋の行方はもどかしすぎるが、ホッとできる小説だ。
個人的には劇的な「三度の海峡」「逃亡」「総統の防具」「国銅」がオススメだが、引き出しの多い作家だ。

千日紅の恋人 (新潮文庫)

千日紅の恋人 (新潮文庫)