震度0

作者:横山秀夫朝日新聞出版
阪神大震災の前日、N県警警務課長の不破が姿を消した。
人望もあり、警察の内情に詳しい不破の失踪は秘密にされる。
警察庁キャリアで本部長の椎野は、不破の失踪に明らかにショックを受けていた。
警務部長の冬木もキャリアで、35歳と若く、将来の警察庁長官と目されていた。
刑事部長の藤川と、生活安全部長の倉本、交通部長の間宮は50代後半の地元のノンキャリ
不破の捜索方針で、キャリアとノンキャリが互いに主導権を握ろうとして、反目しあう。
キャリアの椎野と冬木もそりが合わず、冬木は椎野のことを「私大野郎」と罵っている。
ノンキャリ達も互いに次のポストや天下り先の確保のために、足を引っ張り合う。
権力の保持と自己の保身のために、相手を出し抜こうとする醜悪な密室ドラマだ。
また、公舎に住む彼らの妻達の闘争も加わり、浅ましさが増している。
この作家は権力闘争を描かせると非常に上手い。重厚な内容なのにコメディのようだ。
警察やマスコミに題材は偏りがちだが、それでもクオリティの高い小説を発表している。
この小説も権力者の醜さを描ききり、唖然とする結末の落差が面白い。

震度0 (朝日文庫 よ 15-1)

震度0 (朝日文庫 よ 15-1)