正義の証明(上・下)

作者:森村誠一幻冬舎文庫
様々な悪の手口を紹介した「悪魔のガイドブック」を読み、少年達がレイプ事件を起こす。
その本を出版した社長が「私刑人」と名乗る男に襲われ、本を絶版にすることを発表する。
表参道に近いアパート「河合荘」に引っ越してきたゆかりは、金遣いの荒い国会議員秘書の夫との関係が悪化する。
話は「河合荘」の住民達のエピソードが続くが、ゆかりの夫が何者かに殺害され、話は急展開する。
大物国会議員のスポンサーの百貨店経営者が「私刑人」の襲撃を受け、財界から引退を発表する。
「私刑人」はその後、轢き逃げをして遺族に謝罪をしない外国人を襲い、賠償金を払わせる。
河合荘の住民達は、「私刑人」の活躍に喝采を送るが、自分達の中に「私刑人」がいるのではないかと思い始める。
ゆかり以外の住民達はそれぞれ秘密があり、大物国会議員に対して、含むものを持っていた。
話は面白いのだが、警察の描写があまりにも他人事のように描かれているので、緊迫感に欠ける。
また、警察が手を出せない悪を懲らしめる「私刑人」の手口は痛快なのに、わくわく感がない。
題材はいいのに文章がつまらない。過去の作家になってしまったのだろうか?
でも、森村誠一ってもう75歳なのを知り、改めて驚いた。流行作家には旬がある。残酷だ。