四畳半神話大系

作者:森見登美彦|角川文庫
まず、文体にはとっつけなかった。オタク丸出しの偽悪的な文章は居心地が悪い。
それはデビュー作の「太陽の塔」でも感じたことだった。
でも、この作品は「太陽の塔」に比べ、話の構成は向上し、格段に面白くなっていた。
主人公の私は京都で下宿をする大学3回生。夢見た薔薇色のキャンパスライフは色褪せたものとなっていた。
親友は妖怪のような小津が一人だけで、下宿でくすぶる日々を送っている。
同じ下宿に住む、小津の師匠の樋口には無理な要求をされ、唯一の光明である明石さんとは中々お近づきになれない。
この作品は、希望に燃えた1回生の時にあのサークルに入っていたら、という4つの話で構成されている。
それぞれに面白い展開が用意されていて、同じ書き出しで進むところに不思議なリズムがある。
少しほめ過ぎになるが、高橋留美子の初期の漫画を髣髴させる雰囲気がある。
特に最終話の「八十日間四畳半一周」は、部屋を出ても自分の四畳半の部屋が永遠に続く話で面白かった。
文体を変えれば良い作家になると思ったが、先日読んだ「きつねの話」は完全に離れていたので、今後も期待。