彼女について知ることのすべて

作者:佐藤正午光文社文庫
1984年、ロサンゼルスオリンピックが開催された夏の夜、私はある男を殺害するために車を走らせていた。
地方の小学校で教師をする私は、同僚の教師と結婚するつもりでいたが、看護婦のめいと恋に落ちる。
だが、めいには刑務所を出たばかりの危険な恋人がいた。金を脅し取られた私はめいと二人で殺害を計画する。
しかし、突然襲った市街地の停電で、めいは一人で殺害を実行してしまう。
殺害を計画した夏の8年後の現在、私は離島での6年間の教員生活から戻り、以前の小学校に再任する。
現在と8年前を交互に行き来しながら、物語は進むが、主人公の「私」は相変わらず煮え切らない男のままだ。
めいの一途な恋を疑い、教え子の母親と付き合い、元の教え子を自宅に下宿させながら、表向きは真面目な教員だ。
「私」の過去を知る人たちとの会話を通じて、8年前の真相に近づいていく。
この人の作品はデビュー作の「永遠の1/2」や「リボルバー」「童貞物語」は好きだった。
でも、いつの間にか読まなくなった。ミステリアスな女性像はいいが、男性の描写に共感できなくなったからだ。
久々に読むと面白かったが、悩み続ける男性をますます深く掘り下げているように思った。

彼女について知ることのすべて (光文社文庫)

彼女について知ることのすべて (光文社文庫)