ジバク

作者:山田宗樹幻冬舎
42歳のファンドマネージャーの転落人生を描いた、「嫌われ松子の一生」の男性版。
麻生貴志は都心の投資会社で1千億の金を運用し、年収2千万円を稼いでいた。
白金台に1億4千万円のマンションを購入し、美しい妻と共に移り住む予定を立てていた。
典型的な勝ち組人生にいた貴志は、故郷の高校の同窓会に出席し、かつて振られたミチルと再開する。
ミチルはバツイチで、地元でスナックを経営していたが、店の改装資金に困っていた。
貴志は彼女にいいところを見せるため、インサイダー取引を持ちかける。
貴志の指示通りに購入した株は急上昇し、ミチルに利益をもたらし、二人は不倫関係となった。
だが、二人の不倫を知る者から脅迫され、その会話内容が会社にもバレ、貴志は解雇されてしまう。
妻は貴志の預金の大半を慰謝料として要求し、あっけなく離婚に至る。
ミチルの背後に男がいることに気づいた貴志は、彼女をなじるため、スナックに乗り込む。
そこにミチルの若い愛人が現れ、貴志は激しい暴力を浴び、屈辱的な土下座を強いられる。
貴志は株の取引で生計を立てようとするが、会社にいたときのような情報が入ってこず、資産は半減してしまう。
仕方なく就職活動を始めるが、会社を解雇された40過ぎの男を採用する企業はなかった。
ようやく就職を決めた会社は、未公開株を電話で売りつけようとする違法会社だった。
なれないテレアポは上手く行かず、部長から罵声を浴びせられる辛い日々。
そんな中でようやくカモが見つかったのは束の間で、同じような会社が詐欺容疑で捜査を受け、貴志の会社も解散する。
その後、貴志は彰子という女性と知り合い、ヒモのような同棲生活を送るが、彰子は保険金殺人の容疑者だった。
焼き殺される寸前に貴志は警察から救助され、彰子は死刑判決を受ける。
退院した貴志は、生活のため、貴志は道路交通現場の誘導員として働き始める。
だが、そこでも苛烈な運命が待ち受けていた。誘導中に車にはねられ、左足切断の重傷を負ってしまう。
読んでいる方がもう勘弁してというくらいの転落人生で、400ページを超える作品だが、一気に読み終えた。
よくここまでの不幸を考えられるなと、作者の想像力に脱帽した。この作家は面白い話を書く。
落ち込んでいる人には勧められないが、人生を考えさせられる作品。

ジバク

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