ケータイ紛失

作者:吉村達也角川ホラー文庫
東京百貨店の企画部門で働く尚美は、自身の企画が成功し、不倫相手の津田との関係も良好だった。
だが、昼休みの公園で携帯を紛失し、最悪のストーカー男に拾われたことで、恐怖のどん底に。
携帯電話の中には尚美と津田のメールでの濃密なやり取りや、情事の写真が記録されていた。
携帯を拾ったのは矢ケ崎というストーカー行為で会社を首になり、新宿でホームレスをしている男だった。
矢ケ崎は悪知恵が働き、携帯機器の知識を持っていたので、すぐに尚美のプライバシーを暴き始める。
会社に知られる前に携帯を取り戻そうと、探し回る尚美だが、津田が肝心のところで役に立たない。
それどころか、自己保身のために矢ケ崎に尚美を売ろうとする。尚美の自宅に迫る矢ケ崎。
小説はわずか2日間のエピソードだが、プライバシーを暴かれることに対する尚美の焦燥感は伝わってくる。
でも、携帯電話に赤裸々な写真やメールを保存すること自体、どうかと思うので、あまり共感できなかった。
実際にはこんな無防備な人はいるし、ネットで醜態をばらまかれる事件も現実に発生しているが、正直面白くなかった。
この作家は多作で安定しているが、代表作は未だに無いような気がする。

ケータイ紛失! (ハルキ文庫)

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