のぼうの城

作者:和田竜|小学館
豊臣秀吉が天下統一目前の小田原征伐における、忍城の攻防戦を描いた歴史小説
ぼんやりとした顔で長身で、武力も胆力も知力もない、忍城の城代の成田長親が主人公だ。
家臣からバカにされ、領民からも「でくの坊」を縮め、「のぼう様」と呼ばれている。
だが、重臣の正木丹波は長親に得体の知れない将器のようなものを感じていた。
城主は小田原城に兵を連れて篭城に赴き、残る丹波に「闘わずに城を明け渡す」よう言い渡す。
まもなく、豊臣勢2万が忍城を取り囲む。攻め手の総大将は石田三成で、参軍は大谷吉継
三成は降伏を促すため、長束正家を軍使に立てるが、正家の傲慢な態度に長親は闘うことを告げる。
城勢は五百人しかおらず、唖然とする家臣たちだったが、密かに喜び、戦の準備を進めた。
長親は無能でも、家臣は丹波をはじめ、勇将達が揃っていた。
丹波は長束勢を、柴崎和泉守は大谷勢を、酒巻靭負は石田勢を初戦で打ち破る。
三成は忍城を太閤直伝の水攻めで落とそうとする。湖上に浮かび落城寸前となった忍城
敵味方の見守る中、長親は百姓を従え、船に乗り、三成の前に現れる。
無能だが人気だけはある長親の描き方は意外で、配下の武将の活躍も小気味のいい小説だった。
ただ、武将達に対する底の浅い描写は、少し少年漫画を読んでいるような気分になった。
もう少し重厚さもあればもっと良かったと思うが、話は面白い。

のぼうの城

のぼうの城