綺想迷画大全

作者:中野美代子飛鳥新社
中国文学者である著者が気に入った画を紹介する作品。冒頭の言葉が気に入った。
「自分の目でえらびとり、勝手に自分の論理を展開することの快楽が得られる絵画こそが『私にとっての絵画』」
文章も面白いが、自分が知らなかった絵がたくさん紹介されており、視覚的にも刺激を受けた内容だった。
最初はインドの古代叙事詩ラーマーヤナ」に出てくる猿の将軍ハマヌーンを扱ったタイの王宮寺院の画。
巨大な猿の上を渡る人たちの小ささとか、ハマヌーンの口の中に宮殿がある構図はいい。
また魔王ラーヴァナの頭が10、腕が20本もある絵も面白い。
ミヒャエル・パッハーの「聖ヴォルフガングと悪魔」は有名な画だが、まじまじと見ると色んな発見がある。
中国の仙人図、ペルシャ絨毯の絵柄、インドの王宮の庭園を描いた絵。
西洋絵画の「受胎告知」などで天使が手にしている町の模型。
中国の明代から定規で描かれてきた建物の画と、それにサインをした歴代の皇帝達。
兵隊達がびっしりと隙間なく描かれた「アレクサンドロス大王の戦い」
中でも一番驚いたのは17世紀に描かれたヤン・ファン・ケッセルの「アジア」だ。
中国人の商人と日本の鎧武者が精巧に描かれている。
オールカラーで4千円近くするが、気に入った。画の好きな人にはオススメの本。
買うのを躊躇う人は、ぜひ図書館で見て欲しいと思う。

綺想迷画大全

綺想迷画大全