八月のマルクス

作者:新野剛志|講談社文庫
第45回江戸川乱歩賞受賞作で、作者のデビュー作。
この本を書くまで、ホームレス生活を送っていたという。
笠原は売れっ子漫才師だったが、レイプ事件の濡れ衣を着せられ、芸能界を引退し、アパート経営で糊口を凌いでいた。
そんな彼の元に、以前の相方の立川が尋ねてくる。立川は笠原の引退後も、ピン芸人として地位を確立していた。
立川は笠原に自分が癌に冒されており、余命が幾許も無いことを伝え、失踪してしまう。
その直後、笠原が芸能界を去るきっかけになった記事を書いた片倉が何者かに殺害される。
警察から容疑者として疑われ、かつての芸能プロダクションからは、立川の行方を尋ねられる。
笠原は、立川の恋人のアイドルや、フリーライターと共に事件を調べ始める。
これらの事件にグルーチョ・マサという若手芸人の事故死が絡んでいることを突き止める。
賞をとっただけあり、展開は飽きることはなく、読んでいるうちは面白かった。
十分に面白いが、犯人の設定や、立川の存在があまり意味がなかったのは不満。
その後に出版された「FLY」は掛け値なしの面白さだけに、少し期待しすぎたようだ。

八月のマルクス (講談社文庫)

八月のマルクス (講談社文庫)