望みは何と訊かれたら

作者:小池真理子|新潮社
2006年2月のパリにある美術館で、54歳の沙織は秋津吾郎と34年ぶりに再会する。
以前と変わらない吾郎の姿を見て、1970年代の回想が始まる。
沙織は仙台の高校を卒業後、東京の大学に入学し、下宿生活を始めた。
学生運動が激化する中、沙織は大学にあるベ平連の事務所に出入するようになる。
そこで美奈子や富樫と出会い、理想を語りながらも、恋愛をして、普通の学生生活を送っていた。
ところが、美奈子から「革命インター戦線」を主宰する大場修造という男を紹介され、普通の学生から転落する。
大場の語る理想、性的な魅力に魅入られた沙織は、富樫と別れ、「革命インター戦線」の活動にのめりこむ。
「革命インター戦線」は多摩の田舎の一軒家をアジトにして、メンバーが合宿し、爆弾を製造する日々を送る
抑圧された生活の中で、連合赤軍のようにリンチ事件が発生し、標的になった女子大生は死亡する。
沙織は死体の始末を命じられるが、活動に疑問を感じ、次に標的になるのは自分だと思い、アジトから脱走する。
ボロボロになり東京に戻ってきた沙織を救ったのは、見ず知らずの吾郎という20歳の青年だった。
吾郎は祐天寺の一軒家で一人暮らしをしており、沙織は吾郎の家で匿われる形で介抱される。
半年間にわたり、テレビも新聞も無い、世間から隔絶された状態で二人きりの生活を送る。
リンチを目撃したことで壊れた沙織の心はなかなか回復しなかったが、大場が東京で爆弾テロを起こし、急転する。
70年代の大学生、つまり団塊の世代だが、彼らの真面目で、せっかちに理想を追い求める姿がリアルで良い。
学生運動にのめり込むまでのスピード感と、吾郎との爛れた生活の描写は丁寧で、非常に面白い小説だった。

望みは何と訊かれたら

望みは何と訊かれたら