荒蝦夷

作者:熊谷達也集英社文庫
8世紀の東北の地を舞台にした歴史小説。「まほろばの疾風」の主役アテルイの父アザマロが主役。
大和朝廷陸奥の国の多賀城まで、勢力を伸ばしてきたが、そこから北にはなかなか進めずにいた。
そこで、帰順する現地の豪族を俘囚として、租税はとるものの自治を認める政策をとった。
俘囚たちの中で、まず台頭したのは道嶋大盾だった。その傲慢な態度は、他の俘囚たちに嫌悪感を抱かせる。
遠田公押人はそんな俘囚の一人で、反乱の討伐に出兵を命じられ、アザマロに協力を求める。
アザマロは表向きは大和朝廷に帰順しながら、私的に渤海と交易をし、強力な騎兵をやしなっていた。
反乱をわずか50騎で蹴散らしたアザマロだったが、道嶋大盾と対立するようになる。
大盾の甥の御盾は、多賀城の近衛兵の指揮官だったが、アザマロの強さに惹かれ、出入するようになる。
だが、アザマロが密かに反乱を企てていることを嗅ぎ取った御盾は、密かに遠田公押人に相談する。
遠田公押人は従順なフリをしながら、俘囚たちの闘争から漁夫の利を得ようとしていた。
御盾はアザマロや遠田に翻弄されるが、坂上田村麻呂に出会い、朝廷側に帰順する。
アザマロは坂上田村麻呂不在を狙い、多賀城を攻撃、裏をかかれた大和朝廷は大敗する。
陸奥の国を蹂躙したかに見えたアザマロだが、身内からの矢に襲われる。
まほろばの疾風」は理不尽な大和朝廷に立ち向かう土着のヒーローを描いていたが、こちらは正反対。
腕っ節が強く、頭は切れるが、冷酷で計算高い男の活躍を乾いたタッチで描いている。

荒蝦夷 (集英社文庫)

荒蝦夷 (集英社文庫)