約束の地

作者:志水辰夫双葉文庫
寡黙な祖父に育てられた僕は、祖父を目の前で殺害され、生活が一変する。
右翼団体の大物の庇護下から飛び出し、奨学金を得て、京都の大学に進学する。
祖父と共に過ごした財団に戻ることはなく、ロンドンでトレーダーとして新たな生活を始める。
そこで出会った女性とパリに旅行をしていると、トルコの秘密警察に拉致される。
女性がアルメニアのテロリストだという。ここでトルコとアルメニアの複雑な歴史が描かれる。
僕の祖父はトルコ人で、第2次大戦前に政府の密命を帯び、日本にやってきたらしい。
祖父と過ごした財団の後継者争いや、結婚した妻がクロアチア人であることで、様々なトラブルに巻き込まれる。
世界を舞台にした壮大な小説で、プロットは面白い。トルコやユーゴの民族問題に絡む話も面白い。
ただ、謎がたくさんありすぎて、日本の事件は解決されないままで終わったのは残念。
特に不満に思ったのは、話がいきなり10年以上も飛ぶことで、いくら主人公の一生を描いた小説としても、唐突過ぎる。

約束の地 (双葉文庫)

約束の地 (双葉文庫)