リピート

作者:乾くるみ|文春文庫
大学4年生の毛利は就職も決まり、卒論を書くために自宅で勉強していた。
そんなところに知らない男から「今から1時間後に地震が起きる」と電話がかかってくる。
実際に地震が発生し、直後にまた電話があり、その男は風間と名乗った。
「あなたを10ヶ月前に連れて行ってあげます」という風間の言葉に半信半疑のまま、毛利は指定場所に向かう。
指定場所の中華料理屋には、毛利以外に会社員やOL、受験生など、8人がいた。
ゴルフのレッスンプロの池田、OLの鮎美、トラック運転手の高橋、人事課長の横沢、食品化学の研究者の大森、会社社長の郷原、受験生の坪井、職病不詳の天童。
風間は集まった9人に、過去に戻ることに対して他言はしないこと、歴史を変えるようなことをしないことなど釘を刺す。
半信半疑の者もいたが、風間を含む10名は10月30日にヘリコプターに乗り、時空のひずみに突入する。
戻ってきたのは1月13日の深夜だった。過去に戻り、競馬で稼ぐと行っていた高橋は直後に事故死する。
毛利はOLの鮎美に接近するが、リピートした仲間が1人、また1人不審な死を遂げる。
自分達が10ヶ月前に戻ってきたのはいったいなんだったのだろうか?毛利はメンバーを疑うが。
過去に戻る時間旅行ということで、ケン・グリムウッドの傑作「リプレイ」を思い起こさせるし、作品中でも触れられている。
ただ、この小説は単に、10ヶ月前に戻るだけだ。そこでできることは限られている。
主人公の毛利は時間旅行の前に、10か月分の新聞を真剣に読むが、そこで知ったことは競馬で稼ぐことぐらいだった。
10ヵ月後の現在では生きていたはずのメンバーがなぜ、死亡するのか?
「リプレイ」のようなファンタジーではなく、謎から目が離せなくなるサスペンスだ。
また、「イニシエーション・ラブ」の主人公もそうだったが、人当たりのいい毛利のどす黒い心の奥底の描写もいい。
結末はあっというバッドエンドというのも気に入った。これからの作品に期待ができる作家だと思う。
他の作品も読んでみよう。
↓は単行本だが、文庫本を読んだ。

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