背の眼(上・下)

作者:道尾秀介幻冬舎文庫
ホラー作家の道尾は気まぐれで訪れた宿で、不気味な霊の声を聞き、東京に逃げ帰る。
道尾は友人で霊現象探求所を開設している真備の元を訪れ、宿で起こった顛末を話す。
真備は道尾の話を聞いた後、4枚の写真を見せる。被写体の背中には子供の目が写りこんでいた。
これらの写真はいずれも道尾が訪れた宿の近くで撮影されており、被写体となった4人は直後に自殺していた。
道尾の聞いた声、心霊写真の謎を解くため、真備と道尾は再び、宿を訪れる。
そこで判明したのは、以前に子供が4人失踪しており、1人は首を切り取られた状態で発見された。
さらに、過去を遡ると、修験道で山に籠もる山伏達を虐殺した歴史があった。
世話好きな宿の主人の下に滞在し、謎を調査するが、新たな殺人事件が発生する。
作者のデビュー作で、非常に面白く思ったが、不満も残った。
まず、面白く感じたのは、話の設定の巧みさと、文章の上手さで、新人作家とは思えなかった。
不満は、探偵役の真備が明らかに京極夏彦チックで、冗長に心霊現象を語るところと、犯人の設定の不味さだ。
オカルトとミステリーを融合させようとする点は良いのだが、憑依現象を犯罪の動機にしたのは致命的だった。
ミステリーとして結末に不満はあったが、読んでいるうちは十分楽しめた。
小説としては悪くないし、「ソロモンの犬」と同様、読ませる話を描いている。

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)