水の中の犬

作者:木内一裕|講談社
警察を辞め、探偵となったアウトローを描いた作品。3話で構成されているが、一つのストーリとなっている。
主人公は警察を姑息に利用しながら、問題を解決し、モルヒネの常習者で、正義感は残っているという複雑な性格。
主人公の下に、不倫相手の義弟に犯され、強請られている美女から、義弟を排除して欲しいという依頼が来た。
義弟の性犯罪歴に嫌悪感を持った主人公は、痛めつけようとするが、返り討ちに遭い、命乞いをする羽目となる。
その後、主人公はだまし討ちのような手段で義弟を殺害し、美女は不義理な不倫相手を射殺する。
だが、不倫相手の父親は巨大暴力団の組長の息子で、美女は警察署内で、殺し屋に殺害されてしまう。
主人公は死刑宣告を受けたまま、娘を殺害しようとする男から守って欲しいという母親の依頼に取り掛かる。
ヤクザの報復に怯えながら、調査を始めた主人公は、母親の夫を殺害した元警官に目をつける。
だが、元警官の服役後は行方が知れなかった。服役中の仲間を調べるうちに、ディーボという組織を突き止める。
ディーボとはヤクザの代わりに手を汚す組織で、人殺しから死体の処理までする集団だった。
ディーボの一員に近づいた瞬間に、半殺しにされる主人公。初っ端から痛めつけられすぎだ。
おまけにこの主人公は、ひどいショックを受け、警察を辞めており、精神科医からそのことを思い出さないよう、治療を受けていた。
臆病だが、命知らず、麻薬常用者だが、正義感という危うい主人公をスピーディーに描いた作品。
面白かったが、警察をドロップアウトした主人公の小説はあまりにも多いので、記憶に埋もれてしまうだろうな。
ストーリーは面白いのだが、真新しい刺激が無いのが残念。

水の中の犬

水の中の犬