キマイラの新しい城

作者:殊能将之講談社文庫
千葉に中世フランスの城を移築し、テーマパークを開設した江里は、元の城主の亡霊に取り付かれてしまう。
江里はかつての十字軍の騎士エドガーとして振る舞い、周りの人たちを戸惑わせていた。
この状態に困ってしまった取締役達は、名探偵の石動戯作に750年前の城主の死因の調査を依頼する。
石動はエドガーに会い、テーマパークの中で、750年前の舞台を再現させるべく、取締役を巻き込み、仮想推理劇を展開する。
だが、その寸劇の間に、江里の秘書が殺害され、江里は逃亡する。
中世の騎士エドガーになりきった江里は、東京の六本木に乗り込み、大立ち回りを引き起こし、石動の事務所に逃げ込む。
殺人容疑者の登場にうろたえた石動は、本腰を入れて、殺人事件と750年前の城主殺害の謎を調査する。
中世の騎士による、現代の日本への視線は面白く、石動のだらしなさと併せて、これはよく出来たギャグだった。
推理小説としては、明かされる謎があまりにも陳腐で納得できないが、面白い小説だった。
デビュー作の「ハサミ男」や「黒い牛」も独特の展開で、魅力があったが、これはこの作家の魅力がわかりやすく伝わる作品だ。
逆に言えば、これが面白いと思えば、他の作品を読んでも期待ハズレに終わることはない。

キマイラの新しい城 (講談社文庫)

キマイラの新しい城 (講談社文庫)