人を殺す、という仕事

作者:大石圭光文社文庫
小学生の僕の元にある日「C」を名乗る人物から手紙が届くようになった。
最初は僕の読書感想文の正義感を称えるような、他愛も無いものだった。
ある日、「大阪にいる父に遭うための明日の飛行機には絶対乗るな」という手紙が届く。
半信半疑のまま、飛行機をキャンセルすると、その飛行機は墜落し、乗客乗員のほとんどが死亡した。
その後も、僕の命を救うための助言や、妻となる女性を誘うアドバイスなどが手紙で届いた。
守り神だった「C」の手紙の内容が一変したのは結婚をして、子供が二人できてからだった。
「4歳の女の子を殺せ」と具体的な方法や逃走ルートと、実行しないと母親の命を奪うと書かれていた。
無視したところ、母は不審な交通事故死を遂げてしまう。
次もある人物を殺すよう指示が来るが、今度は、従わない場合、妻か娘二人を殺すと書かれていた。
その後、手紙の指示のまま、殺人を重ねるが、「C」の指示は的確で、警察の姿が近づくことはなかった。
だが、報酬として振り込まれる銀行口座の残高に不審を感じた妻に問い詰められ、秘密を話してしまう。
妻は人を殺すくらいなら、自分が死んだほうがマシだと僕に殺人を禁じる。
手紙をまた無視するが、妻は僕の目の前でマンションから転落死をしてしまう。
子供を守るため、僕は手紙の指示に従い、政治家、女子大生、妊婦を殺害していく。
そんな時、同じマンションに住む、引きこもりの男が、僕の娘に目をつけ、いたずらをしかけてくる。
後ろめたいところのある僕は、警察に届けることもできず、初めて自発的に殺意を覚える。
この作家はエピソードをつなげ、淡々とストーリーを紡いでいくので、読みやすく、面白い。
この作品では、章の冒頭に絶滅した動物の話が出てきて、興味深かった。
これまで背徳的なテーマに取り組んできた作者だが、今回は小児性愛の描写が出てくる。
残酷で、グロテスクで、肉体的痛みを伴う内容は平気だが、小児性愛だけはダメだ。
子供が性的な暴力を受けている様は、読んでいて不愉快になる。これさえなければ面白い作品だった。
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