新堂冬樹を読むならこの3冊

何を間違ったのか、恋愛小説を書いたりするが、この人の真骨頂は暗黒小説だ。
恋愛小説で何冊か読んでいないモノもあるが、暗黒小説はすべて読んでいる。
その中でも、強烈な印象を残したのが、最初に読んだ「無間地獄」だ。

無間地獄

無間地獄

極貧生活を送り、「金が無いのは頭が無いのと同じ」という哲学が身についた闇金経営者。
美貌を武器に女性をたらしこみ、金を巻き上げる美貌のホスト。
この二人を中心に、騙しや脅しの話がスピーディに展開する。
追い込みや取立てのえげつなさを、極限まで描写した作者の出世作
その後の暗黒小説のベースになっている。「炎と氷」や「溝鼠」もいいが、インパクトの強さはこちら。


次は「鬼子」

鬼子

鬼子

売れない作家の息子が突然、人が変わったかのように家庭内で暴力を爆発し始める。
作家は、見守るだけだったが、その様子を私小説として執筆し、息子を殺害することを決意する。
近親相姦をテーマにした後味の悪い作品だが、勘違い野郎の描写がこの作品から現れる。
人を嵌めるという点では、新堂のテイストだが、明らかに異色作。


3つ目は「カリスマ」

カリスマ (上)

カリスマ (上)

これは新興宗教をテーマにした作品で、明らかにオウム真理教がモデルになっている。
美貌の妻を新興宗教団体に取り込まれた、冴えないサラリーマンが取り戻そうとする話。
主人公はせこくて、とことん情けなく、騙され、窮地に陥るが、全く共感できない。
教祖のくだらなさも、あまりにも薄っぺらで、それを盲信する幹部が滑稽だ。
ギャグ一歩手前にも関わらず、読み出すと止まらなくなる面白さだった。


この3冊は2000年から2001年に発表された作品で、今は文庫化されている。
その後も面白い作品は出ているが、単純にストーリーの面白さなら、この3冊だな。